GxP QA コンサルタントという仕事 監査と自己点検

今日で、ランニング休み3日目。
今年の1月に痛めていた、左足のアキレスけん直上の軽い、肉離れ様の症状。
四万十川ウルトラまで、あと1カ月と迫ったところでの、怪我。。。やばい。とおもいつつ、思い切って、休んでいる。

明日には、軽く走ってみたいと思ってはいるけど、中途半端な状態だと、100kmの途中で、またもリタイヤ。そんな悪夢が頭をよぎる。 完治を待つ ⇔ 練習しなくては この気持ちの葛藤がつらい。

足の状態から推察すると、あと2-3日でなおりそうな気配もあるが、
しかしわからない。まだ、納得のいく体作りができていない状態なので、気持ちの中での焦りとの戦いが続いている。

とは言え、気持ちは切り替えて、なんとか出場して、ぼちぼちと完走したい。そんな風に思いながら気持ちを鎮めている一日だった。

さて、今日は、監査、自己点検、信頼性保証について、簡単に解説します。
私の説明しているQAという仕事、別の言葉では、Auditor という仕事になります。

日本語にすると”監査実施者”、”監査担当者”ということになるのですが、前回までで説明した、各薬事規制のなかで、それぞれ呼び方が違っています。

例えば、GLPでは、「信頼性保証」ということばが使われており、これを担当する部門の責任者を信頼性保証責任者、実施者を信頼性保証担当者などと呼んでいます。

英語で説明すると、信頼性保証は、Reliability assuranceという言葉になるのかもしれませんが、担当者についてはGLP AuditorもしくはQuality Assurance (QA)と呼ばれています。

臨床試験では、同様の信頼性保証という仕事にハなるのですが、”監査”という言葉が使われており、部門に対しては監査部門、その役職が、監査責任者、監査担当者というふうに言われています。

また、製造(GMP)および製造販売後(GQP,GVP、GPSP)の規制では、自己点検という言葉が使われており、それぞれ自己点検部門、その役職を自己点検責任者、自己点検担当者と呼んでいます。

しかし、これらの信頼性保証担当者、監査担当者、自己点検担当者はいずれも、英語で仕事を説明しようとするとAuditorとなります。
GMPではQAというと、少し意味が違ってくるので、GMPにおいては、QAとAuditorを使い分ける必要があります。

しかし、私の仕事はあくまでも上記の担当者の業務の代行ということになるので、Auditor ということばで説明できます。

もともと、これらの薬事規制の中では、GxPという薬事規制そのものが、品質管理の基準であり、その品質管理の基準にそって、医薬品の開発研究、製造管理・品質管理、安全管理が行われたかどうかを、実施した当事者が保証しなさい、という意味で、品質保証(Quality Assurance:QA)という役割が設定されています。

ここでいう”保証”これはやったことに対し、やった実験に対し、間違いやうそがないことを100%責任を持ちなさいということなのですが、各規制の対象となる試験(動物試験や臨床試験)では、その規模やかかわっている人の違いなどにより、すべてを保証することができない。

なので、「信頼性を保証しなさい」≒「うそをついていないことを保証しなさい」というニュアンスに変わっています。
それでも、GLPの場合、実施する試験そのものが、臨床試験と比較すると小規模なのものなので、比較的、”保証”という言葉が使いやすく”信頼性保証”という言葉が使用されています。

一方、臨床試験(GCP)になると、実験そのものが、製薬会社だけでできるものではなく、医療機関や医師、試験検査機関等、さまざまな組織がその試験の中に組み込まれ、試験の実施方法も、治験薬管理、モニタリング、データマネージメント、統計解析、メディカルライティングなど、複雑になっています。

また、PhaseⅡ以降の臨床試験になると、ほとんどが多施設共同試験となり、複数の実施医療機関で試験が実施されることになります。
こうなると、監査して、試験全体の信頼性、品質を保証しなさい。という規制はひきづらく、また、特に医療機関の先生方に、細かい品質管理指導をしにくい状況もあり、保証はできないけれど、監査して、その実施状況だけは、確認してください。ということになっています。こういう状況なので、臨床試験では、”保証”ということばは使用されていません。

GCPという規制がひかれるとき、最も参考にされたのが、ISOというヨーロッパの品質管理基準です。この中で監査ということばが、業務プロセスを監視する方法として用いられており、これがGCPでも採用されたようです。

ちなみに、この”監査”という言葉ですが、もともとこの言葉の語源であるラテン語では、単に、”人のはなしを聞く”という意味のようですので、私たちが感じる”監査”という言葉の重さからは、少し軽い感じでもともと使われていたようです。
監査という言葉に関しては、また、別のところで説明したいと思います。

さて、GMPやGVPなどでつかわれる自己点検についてですが、内容はAuditという仕事なのに、なぜか自己点検ということばが使われています。

なぜか?これは、製薬会社の状況(医薬品産業の状況)を映しているといってもよいように思います。
米国においては、大企業とベンチャー企業およびゾロメーカー等の小規模企業の2極化が進んでおり、小規模のメーカーは一定の規模になってくると大企業のM&Aの対象となり、消滅していきます。(薬は残りますが)

一方、欧州および日本では、昔ながらの小規模な製薬会社が多く存在し、家内制的に医薬品の製造・販売が行われているところも少なくありませんでした。

そこで、GMPという製造管理・品質管理の概念が導入されるということになるのですが、小規模の企業の場合、社内のスタッフ数にも制限がありますし、監査部門やら他の薬事規制上必要な部門を社内に設置し、教育等実施していくことに対し、かなり難しい状況がありました。なので、第三者的な対応を求める”監査”部門という組織を要求せず、あらかじめ決められたものが自己点検(Audit)をするよう求める規制となりました。

しかし、GMPの場合、製造方法間違った医薬品、または欠陥のある薬を世に出すと、患者へ大きな影響を与えることになり、薬によっては生命の危機にも直面することになります。

ですので、会社として、責任をもってください ということで、Auditorという役割とは別に、QA(Quality Assurance)という役割を設定し、全体の品質を、医薬品の品質を保証してください。という薬事規制がひかれています。

製造販売後の安全管理の基準で使用されている自己点検も、状況的にはGMPと同様で、会社の体力があまりない製薬会社に配慮した結果のような形になっています。

しかし、製造販売後の安全管理については、最近欧州発で、新たな規制の体制が普及しつつあり、今後、EMAのGVP規制を中心に、規制の世界標準作成(harmonaizaton)は進んでいくものと思います。

いずれ、この部分についても、解説を入れたいと思います。

私の仕事は、GxP QAコンサルタントなので、これらのほぼすべての規制に対応できる、QA、Auditorということで、売っているですが、この幅の広さも業界の中では少し珍しい存在かもしれません。でも、これが私の”売り:sales point”ではありますが。

いずれにしても、今日紹介した、信頼性保証、監査、自己点検、いずれの言葉も、英語では、Auditorとして説明できるもので、
いずれも”第三者的な対応”、”改善提案”を求める業務となっています。
薬事規制や企業でのこれらの実施状況をある程度理解できれば、仕事になりますし、企業に対してや、医薬品開発の段階で社会の役に立つことができる仕事です。

また、一つの企業に所属していた時より、より幅広く、医薬品にかかわることができているので、やりがいも感じています。

明日は、第1回欧州QA会議(1st EQAC)に参加するため、ドイツに飛んでいきますが、ここでも新しい情報をまた仕入れてきたいと思っています。

次回は、もう一度、薬事法のところに帰ろうと思っていましたが、
監査という言葉を理解するために必要な”プロセス管理”という言葉について、解説したいと思います。

GxP QAコンサルタントという仕事 薬事法(3) 医薬品のライフサイクル

いつもはランニングのことばかり書いているこのブログですが、
会社の新事務所を自宅から外へ出すことを決意したことを契機に、私の仕事の内容を整理しています。

4年間、自分自身の生き方を考え、迷い、いろいろなことにチャレンジし、
その中で、最近になって、この仕事につちえも強く流れを感じるようになりました。
ここからこの強みを活かして、ビジネスを拡大し、私自身も成長し、力をつけていき、最終的に私の夢(ゴール)である、障害者雇用1万人の企業の成立を目指したいと思っています。

ゴールから考えると、まだまだ、よちよち歩きの段階ですが、ゴールの大きさに、また遠さに
 怯むことなく、
 焦らず、
 はつらつと
前に進んでいきたいと思っています。

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さて、今日は、昨日までの解説に引き続き、医薬品の承認申請を含めた薬事法の規制について、医薬品のライフサイクルという切り口で説明してみたいと思います。

ライフサイクルといって、どんなことをイメージするでしょうか。
人生のことです。

人が生まれ、幼稚園、小中高と学校で勉強し、大学に進学し、社会に出る、そして社会のルールにもまれ、最後は人知れず姿を消していくことになります。これが、ライフサイクルであり、”人”を”薬”に置き換えて、考えてみることを、医薬品のライフサイクルとして説明します。

GxP QAの仕事の中で、CSV(コンピュータ システム バリデーション)というエリアがありますが、ここでもライフサイクルという概念はとても大事になりますが、今日はすこし大な概念として、医薬品のライフサイクルを考えます。

実は、昨日まで説明した医薬品の承認申請資料の作成ステップについても、このライフサイクルに充てて考えることができます。
医薬品が生まれて、世にでるまでの間を、医薬品として習得していかなければならない機能・能力を、データという根拠で説明していくステップとなります。

簡単に、ざっと、承認申請資料の中身を見ていくと、昨日の解説で、次のような引用がありました。

イ 起源又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料、
ロ 製造方法並びに規格及び試験方法等に関する資料、
ハ 安定性に関する資料、
ニ 薬理作用に関する資料、
ホ 吸収、分布、代謝、排泄に関する資料、
へ 急性毒性、亜急性毒性、慢性毒性、催奇形性その他の毒性に関する資料、
ト 臨床試験の成績に関する資料、

これが、まさに医薬品のライフサイクルの中で、世にでるまでの学校成績を示す段階の説明です。

これに、実際にこの医薬品を育てた親(工場)の評価をGMPという形で行い、
社会にでてから初めてわかってくる副作用の情報(社会にもまれ)などに対する薬事規制(GVP/GPSP)を加え、医薬品の一生にかかわるGxP規制が出来上がっています。

このイトハニホヘトをもっとざっくりと、まとめると、次のようになります。
1. 医薬品の発生起源があり、
2. 医薬品の暫定規格・安定性等を確認しながら
3. 非臨床試験(主に動物実験で、薬理試験、薬物動態試験、毒性試験)
4. 臨床試験(人でも実験)
5. 製造販売後(医薬品の出荷管理・工場管理、副作用情報管理)

この中で、具体的なGxP規制が効いているのは、
3の非臨床試験の試験の中の毒性試験、薬理試験の中の安全性薬理に関する部分に”GLP(Good Laboratory Practice)”がかかわり、
4の臨床試験の部分にGCP(Good Laboratory Practice)そして、
5の製造販売後のところで、医薬品工場・会社に対して、GMP(Good Manufacturing Practice)、GQP(Good Quality Practice)、
また、会社の副作用管理機能に対し、GVP(Good Vigilance Practice)、GPSP(Good Postmarketing Study Practice)などの規制がかかっています。

ひとついい忘れませいたが、臨床試験では、治験薬製造の部分に対しても、GMPと同様の規制が”治験薬GMP”という形で、かかっています。それぞれの日本語の正式な名称は下記の通り、

GLP:医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施に関する基準(省令)
GCP:医薬品の臨床試験の実施に関する基準(省令)
治験薬GMP:治験薬の製造管理,品質管理等に関する基準
GMP:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準(省令)
GQP:医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準(省令)
GVP:医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準(省令)
GPSP:医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準(省令)

これらは、言いかえるとすべて、医薬品の開発段階の”品質管理”の基準であり、
すべて、信頼性の基準(薬事法施工規則第43条)で求めている、正確性と完全性・網羅性、保存の要件を含めて、
申請者に対して、保証および根拠(Evidence)に基づいた証明を求めています。

この中で重要な役割を果たすのがQA(Quality Assurance)という役割であり、
これが、私の仕事のGxP QA の”QA”。

具体的な仕事としては、例えば、作成される承認申請資料の試験データが、
「正確で、うそのない、倫理的にも問題ない方法や根拠データでできているかどうか」
を 第3者的な立場 で検証する役割。

仕事の行為としては、監査、自己点検という言葉で表されますが、
上記を検証し、検証結果を報告するのが、QAの役割であり、各医薬品規制で、QA機能の内容(手順)、結果(検証結果)についても報告が義務ずけられています。

この”QA”ということば、意味をたどっていくと、いくつも考え方があり、深ーい意味があったり、期待が込められています。
次は、このQAという言葉の種類、役割について、もう少し解説してみます。

今日は、以上。