GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(2)

◆昨日までドイツで、1stEQACに参加してきました。
学会そのものはとても良い感じで、目的としていた会議(Global Audit Guidelien)も無事前に進めることができました。

一つ残念だったのは、スイスのQA研究会の元会長(Rita-san)、会って仕事のアライアンスの話をしようと思っていたのに、学会には参加していなかったようです。4月に会った時は、親の介護に加え、Rita-sanの代わりに介護を手伝っていてくれたご主人も具合が悪くなったそうで、入院してしまったとか。。そんな話をしてましたので、今回参加していなかったのも、そのせいかと心配しました。

いずれにしても、一度連絡をとってみたいと思います。

◆それから、別の話ですが、(少し話が長くなってしまいますが)
今日、帰国後、一番気になっていた足の状態を確かめるため、ランニングをトライしてみました。走りだしは、いつもより違和感は少なかったので、なんとかなるかと思っていましたが、300mほど走ったところで、黄色信号がでだし、痛みが増幅してきました。

これは途中で消える痛みではないと判断し、ランニングをそこで中止しました。
本当に残念。エントリーフィー、宿泊代をいれるとすでに2万5千円以上は払っているのに、、、それに、6月の怪我での失敗で、相当気持ちも入れて、練習していたのに。。とかなり残念、ほんと It was so disapointed でした。

自分のことですが、本当に情けない。残念。悔しい。やり場のない気持をどこに持って生きようもない状態になってしまいました。

でも、結局のところ、現状を受け入れるしかなく、現状でできることの最大の努力をしていくしかない。

人生は、これで終わりではないし、来年も、再来年も。。。ずっと続く。
なので、今年3回目の怪我の反省を踏まえ、今を考え、来年に備え、この悔しさ、むなしさを晴らしていければ、

いまは苦しいけど、きっと、こういうこともあったな。。などと喜びに付加価値をつけることができるようになっているだろう。それを期待して、今は、足を直す(安静)に注力することとした。

しかし、私もあきらめの悪さでは、人には引けを取らないので、まだ、四万十を走るのをあきらめたわけではない。

治ればらおった時点で、練習を再開し、
治らなくても、走れるところまで、本番では走ってみたい。

そして、次の年、機会で最大限の成果(喜び)を得たい。
そんなことを今は考えています。

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さて、これだけでも、長くなってしまいました。すみません。
今日は、前回話をするといった
「◆臨床試験」について解説してみます。

「臨床試験」。
人を使った薬の実験のことですが、その仕組みや、かかわっている人たちはかなり多く、組織的にもかなり複雑です。

Phase1,2,3という臨床試験のステップについて、すこし詳しく解説します。
そして、その臨床試験の運営に携わる人たちの職務について、それぞれ説明します。
治験依頼者(Sponsor)、医療機関(Medical Institusion)、IRB(Institutional Review Board)などの、それぞれの中の組織で働く人の役割について、解説したいと思います。

そして、一番面白い、最近の臨床試験の傾向などについて、説明します。

◆さて、臨床試験のPhaseについですが、
俗に臨床試験というと、
第Ⅰ相試験(フェーズ1)から第Ⅳ相試験(フェーズ4)まであります。

第Ⅲ相試験(フェーズ3)の終了後、
国(厚生労働省)に承認申請を行い、審査を経て承認されると「新薬」として製造・販売されます。

第Ⅳ相試験(フェーズ4)では
副作用などについての製造販売後臨床試験が行われます。(これは新薬の場合です)

それでは、第Ⅰ相試験から順に、臨床試験のPhaseを説明します。
◆第Ⅰ相試験(フェーズ1)・・・臨床薬理試験
まず、このPhaseの目的ですが、目的は、次の2つになります。

・人での安全性確認
・人体における薬の代謝(Pharmacokinetics)

被験者は、比較的少人数の患者さんや健康な成人が対象です。
「薬(くすり)の候補」が体内でどのように吸収され、排泄されるかなどの基本的な調査をします。

動物実験の結果をもとにはじめて人間に投与する試験になります。
すべての薬で、動物実験をクリアできると、このPhaseに入ってきますので、試験としてはかなりの数が行われています。

しかし、この段階で、副作用が顕著になり、医薬品化を断念する薬も多く、約半数?はこの段階で、消えていきます。

このステップで行う治験の目的は、ナント言っても人間に対する安全性です。
どこまで量を増やしたら、どんな副作用が起こるかを試す試験も行います。
この試験で、PhseⅡ-Ⅲで投与実験する、安全性から考慮した最大の容量を決める試験も行います。

◆今はGCPが施行され、Phase1試験もすべて病院で行うようになっていますが、GCP施工前は、各製薬会社内で、職員を対象にボランティア試験が行われていました。

その他、安全性の情報の他に、体内でどのように治験薬が代謝され、排泄されるかを調査も行います。その目的で、定間隔で採血されるし、採尿されるし、場合によっては糞も採取されます。ここで、薬物のみでなく、活性のある代謝物なども同定されます。

多くは、動物実験段階で発見されているので、その物質との同一性および血中濃度の変遷等をおったりすることもあります。

またまたそのほかですが、
最大投与量だけでなく、健常成人を対象に連続投与試験をするのも、このPhaseです。

◆このPhaseを要約すると、
 1.短回投与試験(容量は、動物実験からの推測)
 2.連続投与試験
 3.高容量試験

いずれの試験でも血液の採取を行い、PKデータの採取を行い、このPhaseの評価を行います。

◆第Ⅱ相試験(フェーズ2)探索的臨床試験
この相(Phase)の目的は
  ・初めて患者さんに使用して、その有効性を探る 
 ということになります。

また、このPhaseでは、前期第Ⅱ相と後期第Ⅱ相の二つに区別した試験を実施しますが、
それぞれ、下記のような内容になります。

 前期第二相:用量の効果確認試験 (用量を増やせば効果はどこまで触れるのか)
 後期第二相:再適用量の決定(効果、安全性から)

投与量に応じて、どのような薬効の変化があるのか、投与量に応じて薬効がでてくるか、などについて、検討します。

臨床試験で使用する被験者は、比較的軽度な少数例の患者さんが対象となります。
(比較的軽度な少数例の患者さんが対象ということ)

◆まず前期第二相試験についてですが、
有効性・安全性の確認と投与方法・投与量などについて調査・確認をします。

PhaseⅠと違い、このPhaseからは、実際の患者さんに投与して、薬の効果を確かめます。
なお、 使われる薬の用量範囲は前の第1相で安全性が確認された範囲になります。

また、薬が効いている一つの証しとして、用量と効果(反応)が直線的に比例している、というのが根拠になるので、そのあたりも中心に確認することがあります。

Phase2がなかなかうまくいかない場合は、第1相試験の用量を変えて再実験することもあります。

ここで、本当に薬が効果があるかどうかを探すので「探索的試験」とも呼ばれることもあります。

このPhaseでも、比較的少数の患者さんを対象として、どんな病気に効果が有るかを確かめることになります。薬の効果によっては少人数とは言えない数(200人とか)の被験者が参加することもあります。

もちろん、製薬会社もある程度、こんな病気には効くはずだ、というあたりをつけて、新薬を開発しているがのですが、本当に効果があるかどうかを、ここにきて、初めて確かめることになります。おおよそ、製薬会社の予想が裏切られることが多いようです。

ほかには、既に海外での治験結果が知られているとか、販売済みで効果があることが証明できている場合はスキップできることもあります。

いずれにしても、このステップの関門をクリアできるかどうかが、多くの場合が運命の別れ道となっています。

<後期第2相の主な目的>
このステップの大きな目的は、「最も効果が出て、副作用が出にくい」治験薬の量を設定することにあります。

例えばここに高血圧の治験薬「A]が有ったとしましょう。
この場合、次のように治験薬の成分量を振り分けます。

プラセボ:有効成分無し
治験薬A1:有効成分が10mg
治験薬A2:有効成分が20mg
治験薬A3:有効成分が30mg

 ここに何故、プラセボ(有効成分無し)を入れるのかというと、人は薬を飲んだという気分だけでも、結構、その気になって効果らしきものが出てくるものだからです。(Placebo効果)
  血圧のように気分に影響されやすいものや痛みというようは自覚症状は、この点を注意しないと、本当に薬が効いているのか、気分的なものなのかが、分からないことになります。

一方で抗ガン剤のように「癌の縮小」というように気分で大きく左右されずに、しかも客観的に(自覚症状ではなく、他覚症状として)計測できるものは、この影響は比較的に少ないようです。

だから、この後期第2相臨床試験は非常に重要な治験なのですが、問題も多いPhaseということもできます。理由は、

まず、プラセボの存在です。
患者さんに治験に参加してもらう場合、当然、そのプラセボがあなたに当る確率(上記の場合4分の1)を事前に説明する。
ここで、患者さんの中には、プラセボが有るのなら、参加しないという答えがあることが多い。(正直言って、僕もたとえば鎮痛剤だったら嫌だ。)

また、治験の結果、効果が最も出るのは有効成分が30mgのものだったとしても、副作用が多数出る場合は、その有効性という恩恵と副作用という辛さをバランスにかけて、最終的には効果もほどほどに出て副作用の発生が少ない治験薬A2が選ばれる場合もあります。

下手をすると、私も経験したことがありますが、ここでプラセボとの間で有効性で統計学的に差が無いという場合もあります。当然、この場合、ここで開発は中止となります。

◆第Ⅲ相試験(フェーズ3)検証的臨床試験
第Ⅱ相試験の結果を踏まえて、
多数の患者さんの治験ボランティアによって最終的な有効性・安全性や投与方法・投与量などを確認します。

(目的)
 ・多数の患者さんに使用してもらう (病気によって、参考例数も示されています)
・現在有る標準的な薬との差を見る

なので、「検証的試験」とも呼ばれます。

いよいよ、治験の最終ステップとなりますが、
承認申請に向けて効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めるステップということになります。

用量については、前のステップで推奨された用量(例えば上記の「治験薬A2」)が使用されます。

 例えば高血圧の治験薬だった場合、既に承認され使用実績がある標準的な高血圧の薬(ここではBとしよう)を相手にして、それに劣っていないことを証明する場合も有る。
このような場合、治験参加者さんに使われるのは次の2種類のどちらかである。

(1)治験薬A2(有効成分有り)+標準薬Bのプラセボ(有効成分無し)
(2)治験薬A2のプラセボ(有効成分無し)+標準薬B(有効成分有り)

つまり、(1)を使われる治験参加者さんは、治験薬A2が使われており、(2)の治験参加者さんは、標準薬Bを使われていることになる。

プラセボを含んだ試験を行う場合、医師も治験参加者さんも、治験依頼者もどの治験参加者さんにどちらが使われているかは、治験中には分からないようになっている。

◆また、最近では、この第3相臨床試験と平行して「長期投与試験」も実施されるようになりました。
これは、半年以上の使用例として300例以上、1年以上の使用例として150例以上等というようにして、主に「長期使用した場合の副作用の発現(安全性の情報)」を見るために作られたガイドラインに従って実施されることになります。

この長期試験は、その治験薬が新薬として承認されるまで(つまり申請後、審査中も)、治験薬を治験参加者さんに使ってもらえる手段としても、使われています。

今は、もし治験参加者が希望し、長期投与試験に基準に合致さえすれば、承認され処方薬として使われるまで治験薬を使えるという道が残された形になっています。

しかし、ここにも実は落とし穴が潜んでいて、有効性や安全性に問題が無かったとしても、その治験で重大にGCP違反が発見されると、その申請データは却下される、ということになります。こうなった場合、決断を迫られるのは、製薬会社である。

もう一度、治験をやり直すのか、もう開発を中止するのか、その場合、長期投与試験に参加中の治験参加者さんはどうなるのかなど、複雑な難しい問題への対応が迫られることになります。

この最後の第3相臨床試験が無事に終り、標準薬よりも有効性も安全性も劣っていないことが証明できたら、承認申請を当局に提出することになります。

◆第Ⅰ相~第Ⅲ相試験で得られたデータや臨床成績をまとめ、 国(厚生労働省)に承認申請を行い、厳しい審査を経て承認されれば「新薬」として製造・販売することになります。

◆しかし、治験は終わりますが、薬の有効性や安全性の情報収集は、実はここからが本番になります。 治験という特殊な状況で使用されていた時と違い、通常の診療下において、どのような副作用が出るか分かりません。

また、多くのデータが集まってくると、いろんな問題が分かる。例えば、ある種の薬と併用すると思わぬ副作用が出たり、長期に使うと、別の病気を誘発するとか、さまざまな問題もこの段階では含んでいます。

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◆PhaseⅣについて
 新薬は世の中に出てからが、本番です。

◆第Ⅳ相試験(フェーズ4)製造販売後臨床試験
第Ⅲ相試験よりもさらに多人数の患者が対象です。
新たな成分・用法・用量・効能などに加えて、第Ⅲ相臨床試験までの結果では得られなかった副作用などについても追跡調査をします。

目的は、実際の病院の現場で、効果と安全性が、当初の目的通りでているかどうか、副作用、使用時の不都合などがないか、製造販売後の商品について、さらに綿密に効果の確認をすることになります。

以上が、臨床試験を実施するひとの役割の除いた、簡単な臨床試験のステップになります。

上記のほか、各製薬会社では、マーケティングを目的とした臨床試験(併用試験、使用試験、切り替え試験)も実施されます。このあたりは、品質保証にかんしては今までそれほど厳しくはありませんでしたが、

N社の抗がん剤のデータのねつ造等の話題もあり、この手の承認申請、再申請を目的としない臨床試験も最近増えてきています。

以上、すこし長くなりましたが、ここまでは臨床試験のPhaseの説明でした。

次回は、製薬会社、医療機関で臨床試験を担当する各職務について、簡単に解説します。

以上。