先日、東京で「欧州・米国の薬事制度の基礎」ということで、12:30~16:30の4時間話をしました。準備不足で、前の日はほぼ徹夜になった仕事でしたが、なんとか終わりました。

範囲がブロードで、どこに焦点を当ててしゃべればよいのか、私自身も分かりにくいところがあったので、用意した資料も”浅く広く”そのものの資料となりました。

具体的には。
欧州のEMA、米国のFDAについての組織や役割について、
ICHについて
臨床試験の実施について、
GLP、GCP、GMP、GVP等の内容と国際的なハーモナイズの状況について
という感じのもの、

また、各薬事規制分野について、GLPについてはOECD、GMPではPIC/S、GVPではEu-Guidelineで、いずれも欧州が、世界の薬事規制をリードしている状況を説明しました。

本当は、こういう説明の中から、どこかの分野で深堀して、話をしたいところですが、
集まった方たちも、本当にさまざまな立場で来られていたので、できるだけ質疑を中心に話せるようにしていきました。

講義の内容は、個人的には”いまいち”になってしまった感がありますが、
受講者はともかく、私のほうはこれでも、準備で勉強させてもらったので、収穫はあったように思います。

さて、前置きが長くなりましたが、今日は、
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GCPにおけるスポンサー(治験依頼者)の仕事の最後、”治験薬管理”

1. モニターまたはCRA(Clinical Research Associate)
2. QC担当者
3. データマネージメント
4. 統計解析
5.メディカルライティング
6.治験薬管理
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について少し説明をします。

治験薬に関しては、
1.治験薬の製造・出荷(治験薬GMP)
2.治験薬の保管・供給(保存、ラベリング、出荷体制、使用済み治験薬の管理)
3.治験薬取り扱いに関する治験実施施設への指導(取り扱い手順書の作成、盲検性の維持)

こんなところが、仕事になってきます。
1.の治験薬GMPについては、日本ではGCPの範疇として処理されていますが、
欧米では、ほぼGMPの範疇として規制されています。

実際、GCP査察の時には、治験薬GMPについての調査はほとんど行われず、
PMDAのチェックリストの中にも、具体的な内容は含まれていません。
しかし、当局より、基準として示されており、最近では欧米でも、治験薬段階のGMPについては、指示内容が示されていますので、順守していなければ、バイオレーション(GCP違反)ということになります。

しかし、EMAの査察では、治験薬GMPについてもGCP査察の現場で確認する準備があるようです。
今までは、あまり確認されることのなかった治験薬GMPですが、今後は徐々に、高いレベルでの管理が必要とされるようになるようです。

このあたりの状況についての詳しい内容は、GMPを説明するときに、改めて紹介したいと思います。

2.の治験薬の保管、供給についてですが、
ICH GCPでも、下記の5.12~5.14にルールの内容が比較的詳しく記載されています。
5.12 Information on Investigational Product(s)
5.13 Manufacturing, Packaging, Labelling, and Coding Investigational
5.14 Supplying and Handling Investigational Product(s)

また、日本のGCP基準では、
第16条(治験薬の管理)、17条(治験薬の交付)として、こちらも詳しく、ルールの内容が記載されています。
内容は大まかに言うと、
1)治験を開始する前に、治験薬の非臨床、化学特性関連の情報については、十分収集し必要なデータがそろっていることを確認すること
2)治験薬の保存を適切に行うこと(場所、セキュリティ)
3)医療機関との契約前に治験薬を交付しないこと
4)治験薬の出荷、受領、処分、返却及び廃棄の記録を確実に残すこと
5)盲検性の維持に関すること
6)医療機関で使用する治験薬管理の手順を準備すること。(医療機関と協議のうえ)
などの内容になっています。

詳しい内容については、ここでの説明は避けたいと思いますが、監査の時には、
・治験薬の保存場所の確認(セキュリティ)、
・冷蔵庫等を使用している場合は、冷蔵庫の維持・管理記録
・出荷・回収状況の確認
・回収した使用済み治験薬の保存場所の確認など。

を行います。
また、盲検性が重要な場合は、盲検性を維持するために決められたルールにのっとり、治験薬の管理者が動いているかなど、
インタビューおよび記録類の閲覧により確認していくのが、このパートの仕事になります。

治験薬については、この後説明する、臨床試験の実施医療機関での管理が、また重要な確認事項となりますので、
そことつなげて、一連の治験薬管理の流れを確認してもらえればと思います。

治験薬の管理で確保しておかなければならない大事な点は、1.セキュリティ 2.品質の維持の2つで、
これを治験薬の場合、製造所、治験依頼者、医療機関の中を移動していきますので、この間の流れを上記の2つの重要事項が維持が適切に行われているかどうかを確認して行くことになります。

規制を読むといろいろ書いてありますが、実際の監査の現場では、まずは、上記の点を確認していっている感じです。
そうすることで、おかしいと思ったところについて、条文を読むとそれに関する記述がある。。といった感じでしょうか。

最後は、感覚的な話になってしまいましたが、治験薬の管理については、ここまでとします。

次回からは、実施医療機関内での臨床試験を行う上での役割について、書いてみます。

以上。