GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(9) 実施医療機関

また、ブログの間があいてしまいました。
理由は「忙しかった」の一言になりますが、
事務所開設依頼の事務所体制の整備、仕事の〆切、海外出張などなど。
いつものことであるが、メール一つ、電話1本ですむようなことについても、その「時間がない」と感じる今日この頃。
友人から「忙しい」をブログに書いちゃダメ、といわれるが、ときどきはお許しいただきたい。

私のブログ、Facebookは、多くは走る話題。
100kmマラソンの時の膝の負傷もほぼ癒えてきたので、改めてランニング活動も始動しました。
次は12月8日の青島太平洋マラソン 3年ぶりくらいになるような気がしますが、3回目です。
練習不足ではありますが、とりあえず走ってきます。

————————————————————————–
さて、今まで、GCPについて、スポンサー(治験依頼者)の立場で、その役割を書いてきましたが、
今回は、実施医療機関の立場について、少し書き始めてみたいと思います。

臨床試験は、多くは製薬会社が企画・計画し、医療機関で実施する、という流れになります。

臨床試験を実施する前に、毒性試験、薬理試験、薬物動態試験など、非臨床試験と呼ばれる一連の試験を実施しますが、
これらは、一つの場所、研究所で実施されるので、比較的コントロールは容易です。
といっても、非臨床試験の中でも細かいルールがあり一概にそういうこともできないではありますが、

臨床試験と非臨床試験の一番の違いは、
1.試験を計画した人と実施者が違うこと
2.多くの場合、試験の実施現場が多施設にわたること

他にもありますが、上記の2つの要因が、臨床試験の難しさを感じるところです。
自分以外、自社以外の人たちの協力を得て、試験を実施することになるので、「暗黙の了解」は禁物で、
参加するさまざまな人たちを統制できるルールを整備しないと試験が成立しません。

臨床試験を実施するためには、治験依頼者の中の役割も相当量がありますが、医療機関に役割もまた大変で、
もし、一人で全部をやろうとすると、気が遠くなりそうな作業量があります。

さて、前置きがまた永くなってしまいましたが、
臨床試験を実施するうえでの、実施医療機関の中の役割としては、以下のような登場人物、機関があります。
1.実施医療機関(Institution)
2.治験責任医師(Principal Investigator)
3.治験分担医師(Sub-Investigator)
4.治験コーディネータ(Clinical Research CordinatorまたはStudy Nurse)
5.治験薬管理者(Pharmacist)
6.治験事務局(日本のみ)
7.治験審査委員会(Institutional Review Board)または治験倫理委員会(Ethics Committee)

海外では、極端な話ではありますが、治験責任医師と治験審査委員会があれば治験の実施は可能ですが、
日本では、100%ではありませんが、上記のスタッフがそろっていないと治験の実施はできません。

まず、1の実施医療機関ですが、
海外では、臨床試験を製薬会社と治験責任医師の直接契約で実施するので、
この規定はありません。しかし、日本では臨床試験を実施する場合、まず、医療機関と契約することになるので、
ICHでも実施医療機関の言葉もでてきます。

最近は、治験を請け負う医者(MD)の方も、特定の医療機関に所属せず、専門医として、さまざまな医療機関と契約して活動される先生も多いので、治験の現場では日本でもかなり欧米化が進んでいるようにも思えます。
しかし、お医者さんは、医療機関に属する(雇用されている)というイメージがあるのか、日本では、この規定があります。

その中で、その役割として、
治験責任医師、分担医師の指名、
治験薬管理者の指名などの役割があります。

治験を請け負う医療機関では、手順書・規定も整備しておかないといけないので、
これらの役割については、病院長の名前が、治験契約、治験の依頼、治験の審査などの場面で、出てくる程度になります。

無視することはできませんが、臨床試験の現場では、ほとんど名目上の登場になっているように感じることもあるので、
おそらく、10年度?くらいには、日本での臨床試験でも、GCP上のこの役割はなくなっているのではないかと思います。

しかし、この項目については、日本では無視できない項目ですので、
改めて別の機会、GCP適合性調査の場面を想定した内容の説明を考えていますので、そこで、話をしたいと思います。

次に、
2.治験責任医師、治験分担医師についてですが、
臨床試験を実施する最も重要な役割になります。臨床試験で計画されている内容をカルテ中に、被験者を評価した内容および結果、試験の実施内容を記載し、その結果現れる症状を記載していきます。

つまり、このデータが「生データ」、治験では「原資料」といい、臨床試験の大元のデータとなります。
このデータが、医薬品の開発の中で必要とされているデータであり、このデータを得るために、また、正確なデータを得るために、
組織体制および試験のプロセス管理がGCP(Good Clinical Practice)として要求されています。

カルテへの記載内容が、医師の最大の役割ですが、
被験者の数が多くなり、タイミングも一様ではないので、これらの医師の役割を補完する役割として、

3.治験コーディネータの役割があります。
もともと、臨床検査技師や看護師、薬剤師といった資格をもった人が、
その資格でできる医療行為(投与、採血、カルテへの実施内容の記入等)を治験責任医師に変わって代行します。

治験でカルテが原資料になりますが、
このデータを計画した試験通りに整理して、収集するために被験者ごとに、「症例報告書」という書式が用意されます。
ここに治験で計画したデータを収集していくことになりますが、ここで原資料から症例報告書への転記という作業が行われますが、
この作業を主にCRCが実施し、その記載内容を治験責任医師が確認し、治験依頼者へ報告していくという流れで、治験が実施されていくことになります。

次に、
4.治験薬管理者ですが、
治験薬の管理手順書という文書が、治験依頼者から作成され、治験実施医療機関の薬剤部、もしくは治験事務局の中に設置された薬剤師が、治験薬の保存、払い出しおよびその記録を担当します。

また、役割の手順にもよりますが、盲検試験を実施している時は、その盲検性がきちんと保たれているかどうか、については
治験薬管理者の作業内容も重要になってきますので、その手順に従った、適切な管理が必要になってきます。

5、IRB(治験審査委員会)については、
また別の機会にも説明しますが、治験が実施されるにあたり、被験者、患者の人権および安全を守るために、
利害関係のない第三者である専門家にその判断をゆだねたものであり、

日本では、主に各実施医療機関に設置されており、
海外では、地域および中央にそれぞれ治験審査委員会または治験倫理委員会という名称で、設置されています。

例えばヨーロッパでは、臨床試験を計画するに当たり、
治験の計画を規制当局に申請して、治験を実施することになりますが、
規制当局への申請とともに、Ethics Committee(倫理委員会)にも、同様に必要な資料を提出し、
所定の期間内にコメントが帰ってこないことを確認してから、治験を開始するようになっていますので、
その役割の重要性は理解できるものと思います。

さて、ここまで、GCPについて、治験依頼者(スポンサー)の役割及び実施医療機関の役割について、述べてきましたが、

次回からは、
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の書面調査・実地調査の内容に沿って、
治験の実施に必要な事項を解説していきたいと思います。

重複する内容も多くなりますが、
角度を変えてみることで、その理解は進むものと思いますので、私自身の再理解も含めて、書いていくことにします。