筑紫野市商工会で進めている”紫(むらさき)プロジェクト”
私も専門家として参加させていただいています。
商工会のメンバーが中心となって絶滅危惧種の”紫草”の栽培を手掛けています。
そこから地域振興、産業振興の種を膨らませていこうとするプロジェクト。
このプロジェクトについて、いろんな角度から話すことがあります。
時間があれば、ゆっくり、この話も書きたいのですが、今日は一つだけ。
紫と書いて”ゆかり”と読みます。
古今集にある「紫の一本(ひともと)ゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る」
(紫草が一本あるがために、武蔵野に生えている草は皆いとしいと見えるのです)という歌から、「紫」は“縁(ゆかり)”の色とされています。このことから、紫は縁結びの色であるといえますが、
同じ縁でも、額田王と大海人皇子の有名な歌からは、紫の不思議な魔力を感じさせます。
「あかねさす紫野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る(万葉集)」
「紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(万葉集)」
天智天皇の妻であった額田王との天地天皇の実弟の大海人皇子との関係をうたった歌ですが、一旦引き裂かれた二人が未だに紫(ゆかり)で結ばれていることを示す歌のようです。
紫は強力な縁(ゆかり)の色であるということでしょうか。
(うたの訳)
茜色のあの紫草の野を行きその御料地の野を歩いているとき 野の番人は見ていないかしら ああ あなたそんなに袖を振ふらないでよ
紫草のように香れる君がもし憎かったなら いまは兄の妻の君を どうして恋い慕うことがあるものか
更科日記でも、源氏物語の一節に「紫のゆかり」というものがあったとされています。具体的にどの部分を指すのか、どういう内容だったのかを示す記述はないのですが、源氏物語の”若紫”の話が有力なようです。
これも、どちらかというと、複雑な恋愛のお話なので、“紫のゆかり”から、紫(むらさき)の魔力ような、人と人とをひきつける力を感じます。
私も紫の色の魔力に魅せられてしまっているのかもしれませんが、
このプロジェクトに魅せられています。