GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(9) 実施医療機関

また、ブログの間があいてしまいました。
理由は「忙しかった」の一言になりますが、
事務所開設依頼の事務所体制の整備、仕事の〆切、海外出張などなど。
いつものことであるが、メール一つ、電話1本ですむようなことについても、その「時間がない」と感じる今日この頃。
友人から「忙しい」をブログに書いちゃダメ、といわれるが、ときどきはお許しいただきたい。

私のブログ、Facebookは、多くは走る話題。
100kmマラソンの時の膝の負傷もほぼ癒えてきたので、改めてランニング活動も始動しました。
次は12月8日の青島太平洋マラソン 3年ぶりくらいになるような気がしますが、3回目です。
練習不足ではありますが、とりあえず走ってきます。

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さて、今まで、GCPについて、スポンサー(治験依頼者)の立場で、その役割を書いてきましたが、
今回は、実施医療機関の立場について、少し書き始めてみたいと思います。

臨床試験は、多くは製薬会社が企画・計画し、医療機関で実施する、という流れになります。

臨床試験を実施する前に、毒性試験、薬理試験、薬物動態試験など、非臨床試験と呼ばれる一連の試験を実施しますが、
これらは、一つの場所、研究所で実施されるので、比較的コントロールは容易です。
といっても、非臨床試験の中でも細かいルールがあり一概にそういうこともできないではありますが、

臨床試験と非臨床試験の一番の違いは、
1.試験を計画した人と実施者が違うこと
2.多くの場合、試験の実施現場が多施設にわたること

他にもありますが、上記の2つの要因が、臨床試験の難しさを感じるところです。
自分以外、自社以外の人たちの協力を得て、試験を実施することになるので、「暗黙の了解」は禁物で、
参加するさまざまな人たちを統制できるルールを整備しないと試験が成立しません。

臨床試験を実施するためには、治験依頼者の中の役割も相当量がありますが、医療機関に役割もまた大変で、
もし、一人で全部をやろうとすると、気が遠くなりそうな作業量があります。

さて、前置きがまた永くなってしまいましたが、
臨床試験を実施するうえでの、実施医療機関の中の役割としては、以下のような登場人物、機関があります。
1.実施医療機関(Institution)
2.治験責任医師(Principal Investigator)
3.治験分担医師(Sub-Investigator)
4.治験コーディネータ(Clinical Research CordinatorまたはStudy Nurse)
5.治験薬管理者(Pharmacist)
6.治験事務局(日本のみ)
7.治験審査委員会(Institutional Review Board)または治験倫理委員会(Ethics Committee)

海外では、極端な話ではありますが、治験責任医師と治験審査委員会があれば治験の実施は可能ですが、
日本では、100%ではありませんが、上記のスタッフがそろっていないと治験の実施はできません。

まず、1の実施医療機関ですが、
海外では、臨床試験を製薬会社と治験責任医師の直接契約で実施するので、
この規定はありません。しかし、日本では臨床試験を実施する場合、まず、医療機関と契約することになるので、
ICHでも実施医療機関の言葉もでてきます。

最近は、治験を請け負う医者(MD)の方も、特定の医療機関に所属せず、専門医として、さまざまな医療機関と契約して活動される先生も多いので、治験の現場では日本でもかなり欧米化が進んでいるようにも思えます。
しかし、お医者さんは、医療機関に属する(雇用されている)というイメージがあるのか、日本では、この規定があります。

その中で、その役割として、
治験責任医師、分担医師の指名、
治験薬管理者の指名などの役割があります。

治験を請け負う医療機関では、手順書・規定も整備しておかないといけないので、
これらの役割については、病院長の名前が、治験契約、治験の依頼、治験の審査などの場面で、出てくる程度になります。

無視することはできませんが、臨床試験の現場では、ほとんど名目上の登場になっているように感じることもあるので、
おそらく、10年度?くらいには、日本での臨床試験でも、GCP上のこの役割はなくなっているのではないかと思います。

しかし、この項目については、日本では無視できない項目ですので、
改めて別の機会、GCP適合性調査の場面を想定した内容の説明を考えていますので、そこで、話をしたいと思います。

次に、
2.治験責任医師、治験分担医師についてですが、
臨床試験を実施する最も重要な役割になります。臨床試験で計画されている内容をカルテ中に、被験者を評価した内容および結果、試験の実施内容を記載し、その結果現れる症状を記載していきます。

つまり、このデータが「生データ」、治験では「原資料」といい、臨床試験の大元のデータとなります。
このデータが、医薬品の開発の中で必要とされているデータであり、このデータを得るために、また、正確なデータを得るために、
組織体制および試験のプロセス管理がGCP(Good Clinical Practice)として要求されています。

カルテへの記載内容が、医師の最大の役割ですが、
被験者の数が多くなり、タイミングも一様ではないので、これらの医師の役割を補完する役割として、

3.治験コーディネータの役割があります。
もともと、臨床検査技師や看護師、薬剤師といった資格をもった人が、
その資格でできる医療行為(投与、採血、カルテへの実施内容の記入等)を治験責任医師に変わって代行します。

治験でカルテが原資料になりますが、
このデータを計画した試験通りに整理して、収集するために被験者ごとに、「症例報告書」という書式が用意されます。
ここに治験で計画したデータを収集していくことになりますが、ここで原資料から症例報告書への転記という作業が行われますが、
この作業を主にCRCが実施し、その記載内容を治験責任医師が確認し、治験依頼者へ報告していくという流れで、治験が実施されていくことになります。

次に、
4.治験薬管理者ですが、
治験薬の管理手順書という文書が、治験依頼者から作成され、治験実施医療機関の薬剤部、もしくは治験事務局の中に設置された薬剤師が、治験薬の保存、払い出しおよびその記録を担当します。

また、役割の手順にもよりますが、盲検試験を実施している時は、その盲検性がきちんと保たれているかどうか、については
治験薬管理者の作業内容も重要になってきますので、その手順に従った、適切な管理が必要になってきます。

5、IRB(治験審査委員会)については、
また別の機会にも説明しますが、治験が実施されるにあたり、被験者、患者の人権および安全を守るために、
利害関係のない第三者である専門家にその判断をゆだねたものであり、

日本では、主に各実施医療機関に設置されており、
海外では、地域および中央にそれぞれ治験審査委員会または治験倫理委員会という名称で、設置されています。

例えばヨーロッパでは、臨床試験を計画するに当たり、
治験の計画を規制当局に申請して、治験を実施することになりますが、
規制当局への申請とともに、Ethics Committee(倫理委員会)にも、同様に必要な資料を提出し、
所定の期間内にコメントが帰ってこないことを確認してから、治験を開始するようになっていますので、
その役割の重要性は理解できるものと思います。

さて、ここまで、GCPについて、治験依頼者(スポンサー)の役割及び実施医療機関の役割について、述べてきましたが、

次回からは、
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の書面調査・実地調査の内容に沿って、
治験の実施に必要な事項を解説していきたいと思います。

重複する内容も多くなりますが、
角度を変えてみることで、その理解は進むものと思いますので、私自身の再理解も含めて、書いていくことにします。

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(8)

先日、東京で「欧州・米国の薬事制度の基礎」ということで、12:30~16:30の4時間話をしました。準備不足で、前の日はほぼ徹夜になった仕事でしたが、なんとか終わりました。

範囲がブロードで、どこに焦点を当ててしゃべればよいのか、私自身も分かりにくいところがあったので、用意した資料も”浅く広く”そのものの資料となりました。

具体的には。
欧州のEMA、米国のFDAについての組織や役割について、
ICHについて
臨床試験の実施について、
GLP、GCP、GMP、GVP等の内容と国際的なハーモナイズの状況について
という感じのもの、

また、各薬事規制分野について、GLPについてはOECD、GMPではPIC/S、GVPではEu-Guidelineで、いずれも欧州が、世界の薬事規制をリードしている状況を説明しました。

本当は、こういう説明の中から、どこかの分野で深堀して、話をしたいところですが、
集まった方たちも、本当にさまざまな立場で来られていたので、できるだけ質疑を中心に話せるようにしていきました。

講義の内容は、個人的には”いまいち”になってしまった感がありますが、
受講者はともかく、私のほうはこれでも、準備で勉強させてもらったので、収穫はあったように思います。

さて、前置きが長くなりましたが、今日は、
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GCPにおけるスポンサー(治験依頼者)の仕事の最後、”治験薬管理”

1. モニターまたはCRA(Clinical Research Associate)
2. QC担当者
3. データマネージメント
4. 統計解析
5.メディカルライティング
6.治験薬管理
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について少し説明をします。

治験薬に関しては、
1.治験薬の製造・出荷(治験薬GMP)
2.治験薬の保管・供給(保存、ラベリング、出荷体制、使用済み治験薬の管理)
3.治験薬取り扱いに関する治験実施施設への指導(取り扱い手順書の作成、盲検性の維持)

こんなところが、仕事になってきます。
1.の治験薬GMPについては、日本ではGCPの範疇として処理されていますが、
欧米では、ほぼGMPの範疇として規制されています。

実際、GCP査察の時には、治験薬GMPについての調査はほとんど行われず、
PMDAのチェックリストの中にも、具体的な内容は含まれていません。
しかし、当局より、基準として示されており、最近では欧米でも、治験薬段階のGMPについては、指示内容が示されていますので、順守していなければ、バイオレーション(GCP違反)ということになります。

しかし、EMAの査察では、治験薬GMPについてもGCP査察の現場で確認する準備があるようです。
今までは、あまり確認されることのなかった治験薬GMPですが、今後は徐々に、高いレベルでの管理が必要とされるようになるようです。

このあたりの状況についての詳しい内容は、GMPを説明するときに、改めて紹介したいと思います。

2.の治験薬の保管、供給についてですが、
ICH GCPでも、下記の5.12~5.14にルールの内容が比較的詳しく記載されています。
5.12 Information on Investigational Product(s)
5.13 Manufacturing, Packaging, Labelling, and Coding Investigational
5.14 Supplying and Handling Investigational Product(s)

また、日本のGCP基準では、
第16条(治験薬の管理)、17条(治験薬の交付)として、こちらも詳しく、ルールの内容が記載されています。
内容は大まかに言うと、
1)治験を開始する前に、治験薬の非臨床、化学特性関連の情報については、十分収集し必要なデータがそろっていることを確認すること
2)治験薬の保存を適切に行うこと(場所、セキュリティ)
3)医療機関との契約前に治験薬を交付しないこと
4)治験薬の出荷、受領、処分、返却及び廃棄の記録を確実に残すこと
5)盲検性の維持に関すること
6)医療機関で使用する治験薬管理の手順を準備すること。(医療機関と協議のうえ)
などの内容になっています。

詳しい内容については、ここでの説明は避けたいと思いますが、監査の時には、
・治験薬の保存場所の確認(セキュリティ)、
・冷蔵庫等を使用している場合は、冷蔵庫の維持・管理記録
・出荷・回収状況の確認
・回収した使用済み治験薬の保存場所の確認など。

を行います。
また、盲検性が重要な場合は、盲検性を維持するために決められたルールにのっとり、治験薬の管理者が動いているかなど、
インタビューおよび記録類の閲覧により確認していくのが、このパートの仕事になります。

治験薬については、この後説明する、臨床試験の実施医療機関での管理が、また重要な確認事項となりますので、
そことつなげて、一連の治験薬管理の流れを確認してもらえればと思います。

治験薬の管理で確保しておかなければならない大事な点は、1.セキュリティ 2.品質の維持の2つで、
これを治験薬の場合、製造所、治験依頼者、医療機関の中を移動していきますので、この間の流れを上記の2つの重要事項が維持が適切に行われているかどうかを確認して行くことになります。

規制を読むといろいろ書いてありますが、実際の監査の現場では、まずは、上記の点を確認していっている感じです。
そうすることで、おかしいと思ったところについて、条文を読むとそれに関する記述がある。。といった感じでしょうか。

最後は、感覚的な話になってしまいましたが、治験薬の管理については、ここまでとします。

次回からは、実施医療機関内での臨床試験を行う上での役割について、書いてみます。

以上。

 

GxP QAコンサルタントという仕事 GCPについて(7)

今日は、新事務所でブログ書いてます。
現在、午後7時すぎ。
午前中、顧問先で営業担当者のヒアリングを行った後、事務所に帰り、システム関連のセットアップ。
夕方近くになり、漸く仕事ができる環境になり、
今は、23日に東京で実施予定の「欧州・米国の薬事制度の基礎知識」と題したセミナーの資料を作成してます。

忙しくて、なかなか着手できず、ちゃんと頭が回りだしたのは、ついさっき。
これから3時間分のプレゼン資料を作成します。ざっと、ないですね。

明日は。午前中、手をつなぐ育成会の勉強会・茶話会にでて、少し話をして、
そのあと、11時ころから四万十川まで直行予定。

18時までに受け付けを済ませ、20日のウルトラに挑みます。
また雨みたいだけど怯まず頑張ります。

そのあと、21日には区長会にでないといけないので、
走った後は、ひと風呂浴びて、直帰。
どんな状態で帰ることになるか、我ながら興味津津です。(途中でぶっ倒れているかも)

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さて、雑談はこんなところで、今日は「メディカルライティング」
それなりに全体をみるスキルは要りますが、業務内容としては、比較的簡単です。

メディカルライティングの仕事とは、
治験実施に関わる各種申請書類や薬事承認取得に必要な各種申請書類、報告書、論文を
薬事法や各種ガイドラインを遵守し、効率的な方法により作成する業務です。

具体的には、治験の実施に必要な下記のような文書の作成を担当します。
 •治験ならびに製造販売後臨床試験等に関する資料作成支援
 (治験計画届、試験実施計画書、同意説明文書、症例報告書、治験薬概要書等)
 •臨床試験に於ける様々な報告書作成支援 (副作用報告書、総括報告書)
 •承認申請、再審査申請のための資料作成支援
 (CTDに対応した申請資料、再審査申請資料)
 •論文作成支援
 •オーファンドラッグ指定申請書作成支援

会社によっては、上記の文書を違う部署に降っているかもしれませんが、
治験の実施において最も重要な「治験実施計画書」「治験総括報告書」および治験薬の詳細な情報を記載する「治験薬概要書」の作成が主な業務となります。

治験実施計画書および治験薬概要書につては、ICH GCPのガイドラインで規定され
ICH-GCP E6 (臨床試験の実施の基準)
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e6r1_97_3_27e.pdf
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e6_97_3_27.htm

治験総括報告書については、
ICH E3 (治験総括報告書の構成と内容に関するガイドライン)
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e3_96_5_1.pdf

として出されているので、QAコンサル(監査等)を実施する場合には、
これらの内容を把握しておく必要があります。

しかし、もっとも大事なのはすべては治験実施計画書から始まるので、
この内容の把握が、治験の監査を実施する場合には最も大事なポイントとなります。

ここで。規定された手順や進め方にそって、きちんと治験が実施されたかどうかをみることになるので、
内容については、ICHにそっているかどうか(簡単な内容)をみるだけで、

基本的にメディカルライティングの善し悪しを評価することはあまりありません。
CROさんの監査をするときには、この手順が出来上がっているかを確認sることになりますが、
実際に治験がはじまってしまうと、この業務に対してはあまり突っ込んだ確認は行いません。

しかしながら、治験を構成する重要な業務であることには間違いはなく、
この業務の上に治験が成り立っていることは十分に認識しておく必要があります。

さて、次は治験薬の管理についてですが、
ウルトラマラソンの後になりそうです。結果報告も含めて。

それでは。

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(6)

本日、試合前最後のトレーニングで20kmを走ろうと思っていましたが、微妙に痛かったところに違和感があるので、自重してます。走ろうか、走るまいか。

とりあえずスタート地点まで行けば、なんとかできる。いまさら”じたばた”してもという気持ちとの葛藤です。

それから、ウルトラマラソンの要綱をよく読んでいたら、受付が前日(19日)の18:00までと書いてありました。

19日の夜のうちに現地に到着できればと思って予定を立てていましたが、昨日あわてて、19日午前に実施予定であった「手をつなぐ育成会の勉強会・茶話会」の予定(私の担当分)を変更し、11時ごろには出発し、夕方前には受付会場の四万十市民スポーツセンターまで辿り着けるようにしました。いやーあぶなかった。

さて、今日は、統計解析
生物統計学の手法を用いて、治験の結果を分析し、治験薬が効果があるのか、既存の市販薬よりも効果があるのかを、統計学的に証明(説明)する作業です。

データマネジメントによって、電子化され、きれいに整合化された症例データに対して、
統計解析の手法を駆使して、解析します。

治験に関わる業務の中で、最も学問的(アカデミック)な分野で、製薬メーカーやCROの統計解析部門は研究職的な雰囲気さえあります。

「検定」「有意差」「棄却」といった統計用語がでてきますが、監査担当者はこれらの言葉にアレルギーをなくす必要があります。

また、SASという統計解析ソフトによるプログラミングが必須なので、プログラミングスキルが要求されます。

なお、どんなに高度な解析手法を用いても、解析するデータが不正確であれば、解析結果は、全く意味を成しません。

全ては、データマネジメント作業の出来次第なのです。

具体的な統計解析の内容については、
ICHのガイドラインE9(臨床試験の統計的原則 平成10年11月30日)

http://www.pmda.go.jp/ich/e/e9_98_11_30.pdf

を確認してください。

監査担当者(GxP QAコンサルタント)としては、この原則および製薬会社、CROで設定した統計解析の手順およびプロトコール(治験実施計画書)に記載された方法で統計解析が実施されているかどうかを確認します。

非常に難しいところですが、時間的な制約がない場合、実際のデータを手計算で確認したり、SASのプログラムの内容を検証することもあります。

しかし、前述の通り、多くの場合、データマネージメントで作成するデータセットが正確であることが大前提になっているので、そのあとは、プログラム(解析の方法)が間違っていなければ、データが狂うことはありません。

また、最近では、統計解析に用いるSASというプログラムに対し、計画したデータが出るかどうか、事前にバリデーションという手順を実施することが必須の要件になってきていますので、我々は、この部分の実施状況及び記録を確認することで、臨床試験データの正確性と確認します。

解析には、解析計画、解析の実施、解析報告書という、通常のプロセスに応じた手順も用意されていることが多いので、その手順を確認していけば、上記の内容を確認することができます。

それでも、統計解析については、言葉としてきちんとイメージしておかないと、監査の現場でも頓珍漢になってしまうので、しっかりと前述の「臨床試験の統計的原則」を学習しておく必要があります。

といい、私も再度、繰り返し勉強しないと、感覚を忘れてしまいそうなので、改めてみておこうと思っている次第です。

それでは、次はメディカルらイティングです。

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(5)

今日はうちの区(弥生が丘南区)の運動会だった。
その他、朝、昨日20km走ろうと思っていたけど、昨夜の酒飲みで寝るのも遅かったのと、
やはり、2日続けて、しかもやみ上がりに20km超のランニングをしたので、体も相当の疲労感と筋肉痛。

なので、スタートが予定の5時から6時になり、
距離も、20kmから12.5kmのコースに変更し走りました。
しかし、きつかった。

そのあと運動会で、グランドゴルフではあったけど、炎天下のプレイは相当疲れましたね。
そのあとの各班に分かれての親睦会も区長として何件か梯子。これも疲れました。

まっ、疲れ方でいけば、100kmを完走できた時は、この比じゃないだろうな、などとも思いながら、気持ちを切り替えてます。

それに、四万十の100kmの時には、次の日が、区長会と研修旅行なので、その日のうちに帰らなくてはならない。少なくとも21日の朝までに。

これもいまから”しんどく”感じるところだけど、この強行軍も楽しんでみたい。

さて、今日はデータマネージメントについて簡単に解説します。

1. モニターまたはCRA(Clinical Research Associate)
2. QC担当者
3. データマネージメント
4. 統計解析
5.メディカルライティング
6.治験薬管理

データマネージメントという業務は、簡単にいうと、

治験及び臨床試験で回収された症例報告書(CRF)の データを入力し、チェックし、修正し、
データに問題があれば、モニターに調べなおさせる といった、症例データを管理する業務のこと。

この業務をもう少し分解すると、
治験実施計画書を作成する際(治験を計画する際)、症例報告書(Case Report Form:
CRF)についても設計しますが、この業務も主にデータマネージメント(DM)の仕事。

当然、CRFの作成にはモニターや他の専門家もかかわっています。
臨床試験の手順に合わせてCRFも作成されていくのですが、設計図の基本はDMの担当といったところ。

次にモニターが治験データをCRFに記入させていき(ちょっと語弊はありますが)、回収されてきたCRFをデータベースに入力し、データの内容を細かくチェックする仕事です。

データから臨床試験の結論を得るためには、この後の「統計解析」という業務が重要ですが、DMは、解析前の正確なデータを統計解析に提供するということが仕事ということができるかもしれません。

その正確なデータを得るために行う業務手順が、
 1.ダブルエントリー
 2.クエリー

まず、1のダブルエントリーですが、薬事規制上、必須というわけではありませんが、データの正確性を確保するために、一般的に必須の手順となっています。

CRFで回収してきたデータを一つ一つ、データベースに入力し、ロジカルチェックを行います。
ロジカルチェックとは、2つの入力したデータが同じかどうかをチェックする業務。

これにより、データベースに入力されるデータの正確性を確保します。

次に、クエリーですが、
これはCRFの記載内容に関することになります。

記載内容については、
1)”CRF作成の手引き”というものも、治験開始前に作成することになっていますので、この内容に沿ってきちんとCRFが作成されているか、
2)治験計画書から逸脱した記載内容になっていないか、
 例えば、
 「データ入力のタイミングが計画されて日時からずれている。許容範囲を超えている。」
 「臨床検査データの測定ミス、採血忘れ」などがないかなど。
3)副作用(Adverse Event:AE、Serious Adverse Event:SAE)について、疑いのある事象がCRFのデータから発生していないか(臨床検査データの変動などから)

などから、CRFに記入された内容について疑義があれば、クエリーを発行し、モニターを経由して治験責任医師の回答を入手し、データの内容を解析に用いやすい状態にしていきます。

AEについては、モニターが行うSDV(Sours Data Verification)の際にも、疑いのある事象が発見されることがありますが、

この際もCRFのデータとして、疑義内容をクエリーで発行し、責任医師のコメントをもらいます。
モニターはその場で責任医師に確認できた場合など、あえてクエリーを発行することもない場合もありますが、

入手・回収したデータが正確なものであるかどうか、それを検証し、正確なデータを作成することがDMの仕事となります。

これらのほか、製薬会社、CROによっては、DM計画書、DM報告書を作成し、DMのやった業務内容をまとめるところもあります。

これらの一連の活動が終了し、データ固定(Data Lock)をかけ、データを簡単に修正できない状態にします。(当然、別に修正する場合の手順は作成しますが)

追加の情報になりますが、
上記のダブルエントリー(ロジカルチェック)を行う場合、SASという統計解析のプログラムを使うことも多いのですが、これで解析前のデータを作り、そのまま、統計解析チームへデータを贈ることもあります。

当然のことですが、こうすることで、最も間違いとして発生しやすい”転記ミス”をなくすことができます。

以上で、簡単ですがデータマネージメント業務の説明を終了します。

次回は、臨床試験の統計解析について、簡単に解説します。
それでは。

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(4)

12時ごろ就寝、朝4時起床、昼間は診断士業務で企業訪問、夜はGxPの仕事で海外からやいのやいのの催促、、遅れていた仕事が昨夜漸くひと段落のところまで来ました。ほっとしています。

しかし、催促はないけど、9月中に終わらしておかなければならなかった仕事もまだまだ沢山残ってます。昨夜までの仕事に比べるとジャブみたいなものですが、本日中に、そのあたりも処理したいと思います。できれば。

それから、本日、新事務所の机等の什器の搬入。
少しづつ、事務所が出来上がっていきます。われながら、楽しみです。

さて、今日は、下記の治験依頼者=スポンサーの業務のうち、QC担当者について、書いておきたいと思います。

1. モニターまたはCRA(Clinical Research Associate)
2. QC担当者
3. データマネージメント
4. 統計解析
5.メディカルライティング
6.治験薬管理

海外にはこの業務が、そもそも存在しないことも多く、日本特有の仕組みのようです。しかし、最近はいろんなステージで品質管理・チェックを行い、データの信頼性を確保する努力が行われるため、海外でもこの機能がちらほら見えるようにはなりました。

この業務、特に決まった業務内容があるわけではありませんが、主にモニターの業務の監視、サポートといったところが業務になります。

チェックするものとして、
1.モニタリング報告書(施設および治験責任医師の選定から、治験実施中のMVR(Monitoring Visit Report)について、内容をチェック。
2.モニタリングのスケジュール管理、
3.必須文書の準備(施設へ渡すファイルの管理)
4.IRB申請資料の準備
5.CRFの一次チェック
6.手順の管理、
7.資料の一時保管 などなど。

多岐にわたります。「モニタリングの業務全般のサポートを細かくサポートする役割」とでもいえるような気がします。

CRF(症例報告書:Case Report Form)については、モニターが治験施設から回収し、データマネージメント部門へ送りますが、その前に簡単なチェックをします。
最近は、EDC(Erectric Data Capture)が、主流になってきており、電子データのプロセスの中に、QCチェックが入っていることもあります。

そのほか、直接モニタリングに関連しないところで、資料の一時保管や、モニタリグ手順の管理をする業務もこの担当者が担うことがあります。

なお、委託や共同開発では方法を統一するために、手順書またはモニタリングプランを作成し、自社のSOPと違う手順を履行することもありますので、その場合にその手順書履行の管理をこの担当者が担うことがあります。

いずれにしても、企業により、治験依頼者により、作業する内容は異なりますが、上記のような作業をQC担当者は行っています。

さて、次はモニタリングと双璧の業務、データマネージメントについて解説します。

以上

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(3)

昨日は北九州市立大学で、Toastmasters Club の 11/17に行われるTall Tale スピーチコンテストの全国大会のリハーサルでした。私の役割は英語コンテストの総合司会で結構みっちり練習させられました。話す感覚も少しわかってきたので、練習のかいはあったように思います。

それに、足。いつもの愚痴になりますが、今日は完全に悪化していて、普通に歩いていても痛い状態でした。とても走れる状態ではない。。。憂鬱になります。10/20のウルトラはとても無理そうです。しかし、まだあきらめはつきません。なんとかならないものか。。。。

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さて、今日は、前回の臨床試験の話の続きになりますが、
製薬会社、医療機関で臨床試験を担当する各職務について、簡単に解説していきたいと思います。

ここで書いた役割を全部説明していくと、またかなり時間を食いそうなので、
今日は、製薬会社のほうから説明します。こちらだけでも、役割はたくさんあるので、途中までになるかもしれませんが、できるところまで書いてみます。

まず、製薬会社のことを臨床試験では、多くの場合「治験依頼者」と呼びます。
多くの場合というのは、最近は(平成18年から?)医師主導治験という臨床試験もGCPの適用範囲に加わってきたので、治験依頼者=製薬会社という構図以外の臨床試験も実施されるようになったからです。

そのなかで、治験の流れとしては
1.治験実施計画書を作成し、
2.治験薬概要書を作成し、
3.臨床試験の実施医療機関を選定し、
4.臨床試験を実施(治験薬の投与)、
5.臨床試験データを収集、評価し、
6.治験総括報告書にまとめる。
というような流れになります。

この流れの全体を統括する役割が、プロジェクトリーダー/マネージャーと呼ばれる存在で多くの場合、実施医療機関のモニタリングを担当する部署から、リーダーが選出され、その中で、治験ごとの役割がアサインされます。プロジェクトリーダーは、治験全体を統括し、治験依頼者がわの総責任者となります。

このプロジェクトリーダーが統括するのが、下記のような業務になります。
製薬会社によって多少の違いはあるかもしれませんが、多くは次のようなものになります。

1. モニターまたはCRA(Clinical Research Associate)
2. QC担当者
3. データマネージメント
4. 統計解析
5.メディカルライティング
6.治験薬管理

このほか、資料保存、SOP管理、教育訓練などを担当する部署があり、それぞれの役割があり、治験依頼者としての全体の臨床試験の実施体制ができます。

また、これらとは別に「監査」という部門が、上記の部署とは独立して組織され、治験全体の妥当性を評価します。監査については、別でまた説明しますが、ここでは1~6の業務について簡単に説明します。

1. モニターまたはCRA(Clinical Research Associate)
業務的としては、”モニタリング”つまり、”監視”が仕事になります。
しかし、ただ監視するだけでは、治験が適切に行われなかったとしても是正することができませんので、監視に加え、治験を適切に実施してもらうために”誘導”していくことが大きな仕事になります。

具体的には、臨床試験を委託する実施医療機関で実施される臨床試験が試験実施計画書(プロトコール)に記載された内容できちんと行われることを誘導するのが仕事になりますが、下記のような手順でモニタリング活動は行われます。

1) 実施医療機関の要件確認
2) 実施医療機関へのプロトコールの説明
3) IRBへの対応誘導
4) 必須文書管理に関する誘導(SMFのフォーマットの提示等)
5) 患者(被験者)の登録状況の確認
6) 治験の進捗状況の確認(定期訪問)
7) SDV(症例報告書への記載内容の確認、カルテとの整合性確認)
8) 症例報告書への記載内容およびAEに関するクエリー対応
9) 治験実施計画書からの逸脱事項への対応
10) 治験終了手続き 

モニタリングの活動を行う担当者のことをモニターもしくはCRA(Clinical Research Associate)と呼びますが、治験を実施していく中で、もっとも重要な業務になります。モニタリング活動が不十分であると、治験データそのものが使えないものになってしまいます。

使えないと、申請データが十分に収集できないことになりますし、被験者(患者)に対して倫理的にも問題のある行為となる可能性があります。ですので、モニターを担当する人はそれなりの責任感が必要になります。

話の途中ですが、今日はこのあたりにしておきます。
このあと、続きの下記の役割について、説明することにします。

2. QC担当者
3. データマネージメント
4. 統計解析
5.メディカルライティング
6.治験薬管理

それでは。

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(2)

◆昨日までドイツで、1stEQACに参加してきました。
学会そのものはとても良い感じで、目的としていた会議(Global Audit Guidelien)も無事前に進めることができました。

一つ残念だったのは、スイスのQA研究会の元会長(Rita-san)、会って仕事のアライアンスの話をしようと思っていたのに、学会には参加していなかったようです。4月に会った時は、親の介護に加え、Rita-sanの代わりに介護を手伝っていてくれたご主人も具合が悪くなったそうで、入院してしまったとか。。そんな話をしてましたので、今回参加していなかったのも、そのせいかと心配しました。

いずれにしても、一度連絡をとってみたいと思います。

◆それから、別の話ですが、(少し話が長くなってしまいますが)
今日、帰国後、一番気になっていた足の状態を確かめるため、ランニングをトライしてみました。走りだしは、いつもより違和感は少なかったので、なんとかなるかと思っていましたが、300mほど走ったところで、黄色信号がでだし、痛みが増幅してきました。

これは途中で消える痛みではないと判断し、ランニングをそこで中止しました。
本当に残念。エントリーフィー、宿泊代をいれるとすでに2万5千円以上は払っているのに、、、それに、6月の怪我での失敗で、相当気持ちも入れて、練習していたのに。。とかなり残念、ほんと It was so disapointed でした。

自分のことですが、本当に情けない。残念。悔しい。やり場のない気持をどこに持って生きようもない状態になってしまいました。

でも、結局のところ、現状を受け入れるしかなく、現状でできることの最大の努力をしていくしかない。

人生は、これで終わりではないし、来年も、再来年も。。。ずっと続く。
なので、今年3回目の怪我の反省を踏まえ、今を考え、来年に備え、この悔しさ、むなしさを晴らしていければ、

いまは苦しいけど、きっと、こういうこともあったな。。などと喜びに付加価値をつけることができるようになっているだろう。それを期待して、今は、足を直す(安静)に注力することとした。

しかし、私もあきらめの悪さでは、人には引けを取らないので、まだ、四万十を走るのをあきらめたわけではない。

治ればらおった時点で、練習を再開し、
治らなくても、走れるところまで、本番では走ってみたい。

そして、次の年、機会で最大限の成果(喜び)を得たい。
そんなことを今は考えています。

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さて、これだけでも、長くなってしまいました。すみません。
今日は、前回話をするといった
「◆臨床試験」について解説してみます。

「臨床試験」。
人を使った薬の実験のことですが、その仕組みや、かかわっている人たちはかなり多く、組織的にもかなり複雑です。

Phase1,2,3という臨床試験のステップについて、すこし詳しく解説します。
そして、その臨床試験の運営に携わる人たちの職務について、それぞれ説明します。
治験依頼者(Sponsor)、医療機関(Medical Institusion)、IRB(Institutional Review Board)などの、それぞれの中の組織で働く人の役割について、解説したいと思います。

そして、一番面白い、最近の臨床試験の傾向などについて、説明します。

◆さて、臨床試験のPhaseについですが、
俗に臨床試験というと、
第Ⅰ相試験(フェーズ1)から第Ⅳ相試験(フェーズ4)まであります。

第Ⅲ相試験(フェーズ3)の終了後、
国(厚生労働省)に承認申請を行い、審査を経て承認されると「新薬」として製造・販売されます。

第Ⅳ相試験(フェーズ4)では
副作用などについての製造販売後臨床試験が行われます。(これは新薬の場合です)

それでは、第Ⅰ相試験から順に、臨床試験のPhaseを説明します。
◆第Ⅰ相試験(フェーズ1)・・・臨床薬理試験
まず、このPhaseの目的ですが、目的は、次の2つになります。

・人での安全性確認
・人体における薬の代謝(Pharmacokinetics)

被験者は、比較的少人数の患者さんや健康な成人が対象です。
「薬(くすり)の候補」が体内でどのように吸収され、排泄されるかなどの基本的な調査をします。

動物実験の結果をもとにはじめて人間に投与する試験になります。
すべての薬で、動物実験をクリアできると、このPhaseに入ってきますので、試験としてはかなりの数が行われています。

しかし、この段階で、副作用が顕著になり、医薬品化を断念する薬も多く、約半数?はこの段階で、消えていきます。

このステップで行う治験の目的は、ナント言っても人間に対する安全性です。
どこまで量を増やしたら、どんな副作用が起こるかを試す試験も行います。
この試験で、PhseⅡ-Ⅲで投与実験する、安全性から考慮した最大の容量を決める試験も行います。

◆今はGCPが施行され、Phase1試験もすべて病院で行うようになっていますが、GCP施工前は、各製薬会社内で、職員を対象にボランティア試験が行われていました。

その他、安全性の情報の他に、体内でどのように治験薬が代謝され、排泄されるかを調査も行います。その目的で、定間隔で採血されるし、採尿されるし、場合によっては糞も採取されます。ここで、薬物のみでなく、活性のある代謝物なども同定されます。

多くは、動物実験段階で発見されているので、その物質との同一性および血中濃度の変遷等をおったりすることもあります。

またまたそのほかですが、
最大投与量だけでなく、健常成人を対象に連続投与試験をするのも、このPhaseです。

◆このPhaseを要約すると、
 1.短回投与試験(容量は、動物実験からの推測)
 2.連続投与試験
 3.高容量試験

いずれの試験でも血液の採取を行い、PKデータの採取を行い、このPhaseの評価を行います。

◆第Ⅱ相試験(フェーズ2)探索的臨床試験
この相(Phase)の目的は
  ・初めて患者さんに使用して、その有効性を探る 
 ということになります。

また、このPhaseでは、前期第Ⅱ相と後期第Ⅱ相の二つに区別した試験を実施しますが、
それぞれ、下記のような内容になります。

 前期第二相:用量の効果確認試験 (用量を増やせば効果はどこまで触れるのか)
 後期第二相:再適用量の決定(効果、安全性から)

投与量に応じて、どのような薬効の変化があるのか、投与量に応じて薬効がでてくるか、などについて、検討します。

臨床試験で使用する被験者は、比較的軽度な少数例の患者さんが対象となります。
(比較的軽度な少数例の患者さんが対象ということ)

◆まず前期第二相試験についてですが、
有効性・安全性の確認と投与方法・投与量などについて調査・確認をします。

PhaseⅠと違い、このPhaseからは、実際の患者さんに投与して、薬の効果を確かめます。
なお、 使われる薬の用量範囲は前の第1相で安全性が確認された範囲になります。

また、薬が効いている一つの証しとして、用量と効果(反応)が直線的に比例している、というのが根拠になるので、そのあたりも中心に確認することがあります。

Phase2がなかなかうまくいかない場合は、第1相試験の用量を変えて再実験することもあります。

ここで、本当に薬が効果があるかどうかを探すので「探索的試験」とも呼ばれることもあります。

このPhaseでも、比較的少数の患者さんを対象として、どんな病気に効果が有るかを確かめることになります。薬の効果によっては少人数とは言えない数(200人とか)の被験者が参加することもあります。

もちろん、製薬会社もある程度、こんな病気には効くはずだ、というあたりをつけて、新薬を開発しているがのですが、本当に効果があるかどうかを、ここにきて、初めて確かめることになります。おおよそ、製薬会社の予想が裏切られることが多いようです。

ほかには、既に海外での治験結果が知られているとか、販売済みで効果があることが証明できている場合はスキップできることもあります。

いずれにしても、このステップの関門をクリアできるかどうかが、多くの場合が運命の別れ道となっています。

<後期第2相の主な目的>
このステップの大きな目的は、「最も効果が出て、副作用が出にくい」治験薬の量を設定することにあります。

例えばここに高血圧の治験薬「A]が有ったとしましょう。
この場合、次のように治験薬の成分量を振り分けます。

プラセボ:有効成分無し
治験薬A1:有効成分が10mg
治験薬A2:有効成分が20mg
治験薬A3:有効成分が30mg

 ここに何故、プラセボ(有効成分無し)を入れるのかというと、人は薬を飲んだという気分だけでも、結構、その気になって効果らしきものが出てくるものだからです。(Placebo効果)
  血圧のように気分に影響されやすいものや痛みというようは自覚症状は、この点を注意しないと、本当に薬が効いているのか、気分的なものなのかが、分からないことになります。

一方で抗ガン剤のように「癌の縮小」というように気分で大きく左右されずに、しかも客観的に(自覚症状ではなく、他覚症状として)計測できるものは、この影響は比較的に少ないようです。

だから、この後期第2相臨床試験は非常に重要な治験なのですが、問題も多いPhaseということもできます。理由は、

まず、プラセボの存在です。
患者さんに治験に参加してもらう場合、当然、そのプラセボがあなたに当る確率(上記の場合4分の1)を事前に説明する。
ここで、患者さんの中には、プラセボが有るのなら、参加しないという答えがあることが多い。(正直言って、僕もたとえば鎮痛剤だったら嫌だ。)

また、治験の結果、効果が最も出るのは有効成分が30mgのものだったとしても、副作用が多数出る場合は、その有効性という恩恵と副作用という辛さをバランスにかけて、最終的には効果もほどほどに出て副作用の発生が少ない治験薬A2が選ばれる場合もあります。

下手をすると、私も経験したことがありますが、ここでプラセボとの間で有効性で統計学的に差が無いという場合もあります。当然、この場合、ここで開発は中止となります。

◆第Ⅲ相試験(フェーズ3)検証的臨床試験
第Ⅱ相試験の結果を踏まえて、
多数の患者さんの治験ボランティアによって最終的な有効性・安全性や投与方法・投与量などを確認します。

(目的)
 ・多数の患者さんに使用してもらう (病気によって、参考例数も示されています)
・現在有る標準的な薬との差を見る

なので、「検証的試験」とも呼ばれます。

いよいよ、治験の最終ステップとなりますが、
承認申請に向けて効能・効果、用法・用量、使用上の注意等を最終的に決めるステップということになります。

用量については、前のステップで推奨された用量(例えば上記の「治験薬A2」)が使用されます。

 例えば高血圧の治験薬だった場合、既に承認され使用実績がある標準的な高血圧の薬(ここではBとしよう)を相手にして、それに劣っていないことを証明する場合も有る。
このような場合、治験参加者さんに使われるのは次の2種類のどちらかである。

(1)治験薬A2(有効成分有り)+標準薬Bのプラセボ(有効成分無し)
(2)治験薬A2のプラセボ(有効成分無し)+標準薬B(有効成分有り)

つまり、(1)を使われる治験参加者さんは、治験薬A2が使われており、(2)の治験参加者さんは、標準薬Bを使われていることになる。

プラセボを含んだ試験を行う場合、医師も治験参加者さんも、治験依頼者もどの治験参加者さんにどちらが使われているかは、治験中には分からないようになっている。

◆また、最近では、この第3相臨床試験と平行して「長期投与試験」も実施されるようになりました。
これは、半年以上の使用例として300例以上、1年以上の使用例として150例以上等というようにして、主に「長期使用した場合の副作用の発現(安全性の情報)」を見るために作られたガイドラインに従って実施されることになります。

この長期試験は、その治験薬が新薬として承認されるまで(つまり申請後、審査中も)、治験薬を治験参加者さんに使ってもらえる手段としても、使われています。

今は、もし治験参加者が希望し、長期投与試験に基準に合致さえすれば、承認され処方薬として使われるまで治験薬を使えるという道が残された形になっています。

しかし、ここにも実は落とし穴が潜んでいて、有効性や安全性に問題が無かったとしても、その治験で重大にGCP違反が発見されると、その申請データは却下される、ということになります。こうなった場合、決断を迫られるのは、製薬会社である。

もう一度、治験をやり直すのか、もう開発を中止するのか、その場合、長期投与試験に参加中の治験参加者さんはどうなるのかなど、複雑な難しい問題への対応が迫られることになります。

この最後の第3相臨床試験が無事に終り、標準薬よりも有効性も安全性も劣っていないことが証明できたら、承認申請を当局に提出することになります。

◆第Ⅰ相~第Ⅲ相試験で得られたデータや臨床成績をまとめ、 国(厚生労働省)に承認申請を行い、厳しい審査を経て承認されれば「新薬」として製造・販売することになります。

◆しかし、治験は終わりますが、薬の有効性や安全性の情報収集は、実はここからが本番になります。 治験という特殊な状況で使用されていた時と違い、通常の診療下において、どのような副作用が出るか分かりません。

また、多くのデータが集まってくると、いろんな問題が分かる。例えば、ある種の薬と併用すると思わぬ副作用が出たり、長期に使うと、別の病気を誘発するとか、さまざまな問題もこの段階では含んでいます。

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◆PhaseⅣについて
 新薬は世の中に出てからが、本番です。

◆第Ⅳ相試験(フェーズ4)製造販売後臨床試験
第Ⅲ相試験よりもさらに多人数の患者が対象です。
新たな成分・用法・用量・効能などに加えて、第Ⅲ相臨床試験までの結果では得られなかった副作用などについても追跡調査をします。

目的は、実際の病院の現場で、効果と安全性が、当初の目的通りでているかどうか、副作用、使用時の不都合などがないか、製造販売後の商品について、さらに綿密に効果の確認をすることになります。

以上が、臨床試験を実施するひとの役割の除いた、簡単な臨床試験のステップになります。

上記のほか、各製薬会社では、マーケティングを目的とした臨床試験(併用試験、使用試験、切り替え試験)も実施されます。このあたりは、品質保証にかんしては今までそれほど厳しくはありませんでしたが、

N社の抗がん剤のデータのねつ造等の話題もあり、この手の承認申請、再申請を目的としない臨床試験も最近増えてきています。

以上、すこし長くなりましたが、ここまでは臨床試験のPhaseの説明でした。

次回は、製薬会社、医療機関で臨床試験を担当する各職務について、簡単に解説します。

以上。

GxP QA コンサルタントという仕事 GCPについて(1)

昨日から1st EQAC(European Quality Assurance Conference) が始まりました。
この会議。学会に参加すると、私のこの仕事のモチベーションが上がります。

今回、以前から入る入るといって、なかなか入っていなかったイギリスのQA団体、RQAに入会希望を出しました。この会の前会長のAndrew Waddelさんに気持ちよく保証人役を引き受けていただき、無事登録できました。

これで、日本(JSQA)、米国(SQA)そして、イギリス(RQA)のそれぞれの会員になりました。プロとしての情報網はだいぶできてきたように思います。

さて、今日からGCPについて、ということですが、
これから、説明していく、目次について今回は紹介しておきます。

1.臨床試験について
2.GCPの歴史、そしてICH-GCP
3.プロトコールについて
4.臨床試験を構成する各担当者の役割について
5.GCPの国内の動き
6.その他(この後は、また書きながら)

◆臨床試験についてでは
Phase1,2,3という臨床試験のステップについて、そして、その中で働く人の各役割について、第3者機関であるIRB(Institutional Review Bord)について、そして最近の臨床試験の傾向などについて、説明します。

◆GCPの歴史、そしてICH-GCPについては
GCPという基準が施行された背景、そしてICH-GCPの現状(ほぼ世界じゅうに普及)
そして微妙な各国の違うなどについて説明します。

◆プロトコールについては
閑話休題的に、我々の仕事で重要な役割を閉めるプロトコール。俗に計画書といいますが、実は違う解釈の仕方があります。このあたりを、説明します。

◆臨床試験を構成する各担当者の役割について
では、プロジェクトマネージャ、モニタリング、データマネージメント、統計解析担当者、Medhical Writing、安全性情報(AE)などの各役割、必要性について、解説します。

◆GCP国内の動き
ということで、最近の国内GCPの動き、活発化しているところなどを解説します。

◆その他・・では
その時までに整理したいと思いますが、アジアのGCPの状況などについて、書いてみようかと思っています。(しかし、今のところ未定)

こんな感じで、書いていきたいと思います。

GxP QA コンサルタントという仕事 プロセス管理

昨日からドイツのケルンという街に来ています。
しかし、旅行代理店には、ボン市内といったつもりが、なぜか隣町に宿泊することになっています。もう少し早く気づいておけば・・・などと思っていますが、

まっ、近くにケルンの大聖堂はあるし、こっちのほうが街だし、いいか。
それに、タクシーだとお金もかかりそうな距離なので、どうしてもバスとか電車とか使って、隣町のボンまで行かないといけなさそうなので、それも、あまり経験することはないので、挑戦してみたいと思ってます。

しかし、いずれにしても、移動に1時間くらいはかかりそう。困ったもんだ。

さて、今日はプロセス管理という言葉についての解説になりますが、
まず、プロセス=工程 という言葉で考えます。

工程という言葉を聞いたことがなければ困ってしまいますが、とりあえず知っているという前提で説明します。

品質管理でなぜ工程管理(プロセス管理)ということかというと、

理由は、最終製品の検査だけでは、問題が起こった時に、何が欠陥でその問題・クレームが起きたのかまでは、分かりますが、なぜ、その欠陥原因が起こったのか?までは分からないから、

プロセスを管理するとは、その工程の中で「誰が」「何を」「どうする」ということを決めて実施する。ということになりますが、

こうすることで、欠陥の発生原因を特定することができ、問題点の解決につなげやすいということになります。

また、この工程を正確に動かしていこうとすると、さまざまなものが必要になってきます。それが、工場生産の場合だと生産計画、手順、教育訓練ということになり、これらをきちんとやっているかどうかを監視(モニタリング)していく、というような役割も発生してきます。

例えば、製造工程を簡単な図で示すと

原料 → 一次加工品 → 二次加工品 → 三次加工品 → 包装 → 最終製品 

このそれぞれのステップに対し、
1)納期、生産量等を計画(決める)のが、”生産計画”であり、
2)「誰が」「何を」「どうする」という風に決めるのが”手順”であり、
3)これらを徹底させ、スピード向上させ、間違いをなくすために”教育(トレーニング)”を実施します。

これらの品質管理の基本を示しているのがISOですが、その中でも、プロセスという言葉をしつこく説明しています。なかなか分かりにくい言葉ですが、

要は、いまからやることをきちんと計画してから実施しましょう、勧めていきましょう、ということで、

これによって、(Plan)、実施し(Do)、検証して(Check)、改善策(Action)を実施していくというPDCAを回すことができ、品質を恒常的に改善していくことができる、という考え方に基づいています。

私の仕事のQAですが、”検証”のcheckのところに当たる場合もありますが、
このPDCAサイクル全体が、回っているかどうかも、QAの対象となります。

工程管理、プロセス管理を含めた、品質システムという概念になりますが、これについては、GCP等の他の個別の規制の解説をするときに、また改めて解説します。そのほうが分かりやすいのでは、、と思いますので。

次回は、私の仕事として一番ニーズの高い、GCP、臨床試験のQAについて、少しずつ話を進めていきたいと思います。